少し広めの歩道がある、大きな橋。
そこから横に逸れるようにして下に降りるスロープを伝い、ゆっくり降りていく。
その先に真っ直ぐ伸びる道と、白い線、それから等間隔に並ぶ街灯が続いているのが見える。
こういう道を、1人で歩くのが好きだ。
人と車の少ない通りを小さめの音で、アップテンポでもローテンポでもない、その合間をすり抜けるような曲を聴きながらに歩く。
嬉しくもなく、悲しくもない。けれどちょっとだけ、切ない。
言葉にできない灰色の気持ちに浸ることができるこの時間が、僕は好きだ。
音楽とか映画とか。あと本も含めて、日々どんなものを見ているのか教えてもらうことが多い。
車を走らせながら聴かせてくれたもの。
カラオケで得意な曲。
何度も読み返した小説。
こういう、音楽や映画、本というのは、きっとその人を構成する根幹をうつす、鏡のようなものに思える。
その人の心に刺さるもの。
どうして心に刺さるのか、その理由を考えると、その人の弱さとか信念だとか、そういう滅多に人に話せないような部分が少しだけ見える気がする。
だから、誰かに好きなものを教えてもらえると嬉しい。
あまり人には見せない部分を、見せてくれているような気がするから。
取り留めのないことが頭に浮かんでいる内に、もう帰路の半分まで歩が進んでしまった。
イヤホンから流れる曲も、いつの間にか終盤に差し掛かっている。
ああそうだ。
これは昔、好きだった誰かに教えてもらった曲だった。
一時は嫌いになりかけたこの曲も、今じゃ好き好んで聴いている。
誰かに教えてもらった受け売りの曲。
でもこれは、きっと自分の弱さを色こくうつす、鏡のようなものだ。
もし好きな曲とか、本、映画が何かと聞かれたら。
きっと僕はちょっとだけ恥ずかしくなる。
だってそれは、僕の弱みをうつしたものだから。
でも、だからこそ知ってもらいたくって
そういう弱いところも全部受け入れてくれる人を探している。
そして同時に知りたくもなるんだ。
貴方の好きなものを。