高校生の頃⑧ 夢と妄想

前回の記事はこちら。

あわせて読みたい
高校生の頃⑦ 言葉にはできないものと、思わせぶりな人 友人と二人きりになった時、手を繋いだことと、校舎をあてもなく歩いた話。目の前の人に触れたいという感情と、その正体。

では続きです。

 

初夢ってのがあるらしい。

割と多くの人が、1月1日に自覚した夢を初夢と思っているらしいけど、

実際はそうではない。

1月1日に就寝し、1月2日に目が覚める。

この時見た夢が初夢という。

まぁ、そんなことはどうでもよくって

なんとなく思い出したことがあったから、

昔話として、ここにつらつら書いていこうと思う。

 

目次

好きな人と夢

寝ている間は、都合よく現実から逃避できる。

寝付くまでが辛くしんどい時もあったが、それでも一度寝てしまえば幾分か楽だった。

時に夢とは、自分の欲望が具体的なものとして現れることもある。

高校生の自分にとっては、性もその一つで

よく好きな人と、夢の中で「そういうこと」をしていた。

これは一重に自分の妄想と、あわよくば、という取り留めもない欲望なんだけれども、

もし、あの日あの時、

当時好きだった人と「そういう」関係になっていたら、

どんな風になっていたのかな、と考えなくもない。

自分の過去に「もし」なんてものは存在しないから

きっとこれは妄想に留まって、霧散して消えていく。

でも

霧散してしまっては勿体ない気がして

こうして文字におこし拙いながらも形を与え、

なんとなしに、この場に放り投げてみる。

 

隠し事

淫靡だ。

たった一人で抱えるそれは、鉛のように重たく響くものなのに

二人でそれを共有した途端、隠し事は淫美なものに変わる。

休み時間の賑やかな声や音が、遠くから聞こえる。

たった20分の間で、満足にできるものでもないけれど。

校舎の中で、比較的人がこないトイレの個室。

きっと君は、いたずらな表情を浮かべているんだろうな。

でも、まじまじとその顔を見ることが叶わないくらい

近くに君はいる。

常識と非常識は紙一重だ。

簡単に破けてしまうような掟を破ってしまった僕らは

二人、隠し事をした。

こんな出来事の続きを描くことが難しくて

初めて、「ああ、そうか」と

目を覚ましたこれが、現実だと知る。

そして学校につけば、好きだった人が「おはよ!」なんて、

あまりに普通に声をかけてくるものだから

ちょっと笑えてしまう。

 

「今日、夢にお前出てきたわ。」
「え、どんな??」

「秘密」

 

僕は「君との、そういう夢」を見たんだよ。なんて言えずに、
意地悪に、誤魔化し笑ってみせた。

あーあ。もし本当に、そんな関係になれたのならいいのに。

朝、わずかな時間で見た夢のせいで、

一日、気持ちが上の空だ。

できることなら、この秘密を二人の隠し事としておきたかった。

 

 

もし、あの時本当にそういう関係になっていたら、と思うこともなくはない。

当時はもちろん、強い願望として持っていた。

でも今となっては、単純な興味の一つだ。

けれど、そういう関係にならなくてよかったのかもしれない。

だって、そのおかげで今こんな風に昔のことが

文章として描けているのだから。

もしあの時、身体の関係でも心の関係でも

現実よりも近しいものになっていたら。

もちろん当時の自分にとっては幸せかもしれない。

でも、きっとそこから見える世界は、今ほど面白くはない思う。

 

何事も、世界が終わるかのように大げさにとらえてしまうのが、

思春期だった当時の自分。

高校時代が平凡に、幸せに終わってしまっては

今の自分は、つまらない人間になっていたと思う。

 

 

続きはこちらから。

あわせて読みたい
高校生の頃⑨ 余り物の本命 「余ったからあげる」と言って渡したチョコレートでも、それはあえて多めに作った本命のチョコ。そうでもしなければあげることもできなかった、ホワイトデーの話。

 

 

 

シェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
目次