高校生の頃⑤ 大人になることと、好きな人

今回も高校時代の事を振り返る記事です。5回目。
前回の記事はこちらです。まだ見ていない方は、よかったら。

あわせて読みたい
高校生の頃④  図書室と修学旅行 「誰もいないね」そういう彼の目元は笑っていた。図書室の静けさに今二人きりなのだと、急に意識させられる。 放課後の図書室に想いを寄せる人と二人きり。何かいけないことでもしているような、不思議な高揚感にどきどきしたお話。




それでは続きです。

目次

大人になること

思春期特有のものなのだと思う。みんな、どんどん変わっていってしまう。

僕と仲良かった周りの友達も、少しずつではあるけれど「女性」を知っていった。

それが寂しかった。

何も知らない子供だった僕ら。

いつしか異性の誰かを好きになって

付き合って、結婚し、子供を授かり家族になる。

「男」である僕らは、女性を好きになって、そうして大人になっていくんだって

周りの大人から、そう教わった。

周りは徐々にではあるけれど、大人になっていった。

自分だけが置いていかれてしまうような、そんな気がしてならなかった。

みんなと同じように

誰かを好きになったり、付き合ったり、そういう話は僕の周りにはなかった。

ただ学校のみんなは、誰かと付き合うことをステータスのようにしていたし、事実、一か月もしないうちに別れるカップルも多かった。(むしろそっちの方が多かった。)

それでも女の子についての話題が、少しずつ増えていったようにも思える。

 

僕はみんなと同じ「大人」にはなれないな。

そう、齢16にして悟ってしまった。

ある意味で、僕はみんなよりかは幾分「大人」だったのかもしれない。

自分の行く末が、将来が、みんなとは違うことに気づき

自分自身について、認識し始めたのだから。

「気になってるって、言ってたよ。」
「誰が?」
「Nさん」

最近、その「Nさん」界隈がざわついているのは知っていた。

僕を見てはざわつくのだから、嫌でも気づく。

「少し絡んであげたら?」
「そうだね。そうしてみる。」

こういう少しざわつく雰囲気は嫌いだ。

Nさんと言う子が、僕のことを気になっているらしい。

彼女のことが嫌いなんじゃない。
周りがはやし立て、盛り上げようとする雰囲気が嫌いなのだ。

僕は足早に、教室を後にし、廊下に出る。

休み時間のにぎやかな廊下には、何故だか居場所がないように感じられた。

誰かのことを、好きになろうとして、好きになれるものなのだろうか。

彼女が欲しい。彼氏が欲しい。そんなセリフが耳に入ることも心なしか増えた。

欲しいから探す…そういう考えは理解できなかった。

現に僕は今片思いをしているのだし、これは好きになろうと思って好きになったわけではない。

(そうだとしたら、初めから男なんて好きにならない。)

そう思うからなのか、周りの恋話にはひどく辟易してしまう自分がいた。

好きな人

放課後の嘘

放課後、学校近くのショッピングモールにきた。この日は部活もなく、彼と二人で服を見てまわった。

「Nさんとはどうなの?」

彼が唐突に聞いてきた。彼女の件は、彼も知っている。

「メールしてるだけ。これといって何もないよ。」
「ふーん。いっそのこと女の子と付き合えばいいのに。」

「まぁ…いい人いたらね。」

 

「好きな人がいるからね。」そう言おうとしたけれど、やめた。

好きな人がいる。そう言った時の彼の反応を見るのが、怖かった。

きっと「だれだれ?」と笑いながら聞いてくる。そんな気がしてならなかった。

そんな彼の顔を、面と向かって見ている自信が無かった。

 

どうしてか悲観的になってしまう。本当は目の前にいる彼に、好きだと伝えたいのに

今の関係が壊れてしまうのが怖くて、何もできずにいる。

だから、今のまま

「もしかしたら、彼も僕のことを好きになってくれるかもしれない」

という可能性を、残しておきたかった。

「もしかしたら」という可能性の中で、生きていたかった。

「夢」みたいなものだ。いつかは絶対、覚めてしまうことを分かっている。

でも、夢でも見ていないと、きっと自分を保っていられないような気がする。

現実を見ず、なんとか目を覚まさないように。

いつかはそれに、目を向けることになるとしても。

 

今だけはこのままで……そう願ってやまなかった。

 

続きはこちらから。

あわせて読みたい
高校生の頃⑥ 球技大会 好きな人と、友人と一緒に臨んだ球技大会の話。好きな人のジャージに顔を突っ込んだ話。
シェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
目次