高校生の頃18 希死念慮

ずっと、ついてまわったものがある。

今日はその話。

目次

帰り道、駅のホームで

 

死にたいと思った。

遠くに、次の電車が来るアナウンスが聞こえる。

多分、それは遠くではなく、きっと近くのスピーカーから聞こえている声なんだろうけど

それは不思議と、遠くの方で響いていた。

 

人が多く集まる時間。

時刻は確か、5時か6時のその辺り。

帰宅ラッシュの時間で、狭いホームに列をなしている。

ここは学校の最寄駅。

家路へと続く電車を待つ。

改修工事の前だった。まだホームドアがついていない。

人の列を避けるようにして、黄色い線とホームの端のわずかな隙間を歩いた。

 

 

誰かが自分のことを、押してはくれないだろうか。

 

ホームの端を歩く度に

そんなことが、決まって頭によぎった。

 

自分で死ぬ勇気なんてないのにね。

バカみたい。

 

中途半端な希死念慮をぶら下げて

惰性で生きていた。

 

 

いつのことだったか、思い出せない夜の中の一つに。

もういつのことか覚えていない。

夜、家の近くにある踏切を渡ろうとした時

そのちょうど真ん中で、足が止まった。

 

次に電車が来るであろう方向を、見る。

警笛が鳴り初め、数回鳴ったあと

踏切から出た。

日付も変わる頃、そろそろ終電になるはずの時間。

誰もいない踏切を背に歩き始めた時、

夜の静けさを打ち消すようにして

電車が走り過ぎていった。

 

いつも胸の辺りにあったもの

うまく言葉には言えない。

けれど、いつも胸の辺りに、何か重たいものがあった。

時折それが強くなり、うまく息ができないような、息苦しい感覚にもなる。

胸の辺りの重たいものが、その重さを増す時、自分の心拍が早くなる。

その感覚がずっと消えなかった。

 

いつになったら、これは消えてくれるのだろう。

 

 

 

深夜に、あてもなく歩くことは大学生になってからも何度かあった。

それは決まって、自分の中に余裕がなくなり、辛くなった時だ。

でもこの時と、高校生の頃とで決定的に違っていたのは

そこに、死にたいという気持ちがあったかどうかだと思う。

 

ずっと、この気持ちだけが心に巣食っていた。

自分じゃどうすることもできず

その気持ちと、付き合っていくしかなかった。

 

 

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