24歳の散し書き・前

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プロローグ 嫌おうにも嫌えないもの

うだるくらいの暑さが肌を焼く。

自分の背中を流れる汗に不快感を覚えながら、少しだけ速足で駅に向かう。

馬鹿みたいに青い空と雲と、うんざりするくらいの蝉の声とが、不躾にも鼓膜を叩くのだから

本当に勘弁してほしい。

夏らしさを爽やかに歌えるあのアーティストは、きっと天下の大嘘つきに違いない。

まぁ、夏の終わりに訪れる、あの妙な寂しさにだけは、共感してやらんでもないが。

こんなことを初夏の今、思ったって仕方がないというのに、

夏の暑さに不満を垂れ流す、夏生まれの男がここに。

そんなことを言いつつも、夏生まれでしし座の自分に、与えられた名前にも含まれる

「夏」というものを、憎もうにも憎めないわけで。

そういう、嫌おうにも嫌えない、ましてや好きなんじゃないかというものが

実はかなり、愛くるしかったりするのだそうです。

 

誕生日と体裁

 

この年になると、誕生日が来たところであまり高揚感を覚えることもない。

この一年の間にやるぞ!と決めた、いわゆるTODOリストを、内容をそのままに

さも新しい面と体裁でもってして繕いあげ、

25歳の一年の、ちょっとした豊富やら目標にあてがおうとするのだからなんとも痛々しい。

立て上げる目標ばかりが御大層で、結果や中身は陳腐なもの。

いい加減、蹴りを付けたいばかりだ。

 

恋愛とかそういうもの

 

自分の中で大きい存在だった人と、別れた。

そして、縁が切れた。

二年半も一緒にいて、友達としては三年を超えようか、という仲だった。

それでも案外、切れるものは切れてしまうものらしい。

今さらどうこう書き連ねることもない。

ずっと一緒にいた人と、他人になること。

自分が望む方向とは、正反対に物事が進んだこと。

気づけば自分も、他人(その人)にあらゆる期待をし、自分勝手に裏切られた気でいた。

恋に臆病になるのもよくわかる。

あれほど大好きだと言い合った仲ですら、一生を共にするような相手にはならない。

自分の幸福のために、傷つけたくない相手ですら傷つけることを強要される状態。

それがどれだけしんどいか。どれだけ胸をえぐられるか。

自分も、相手も、傷つけあって、もう立てなくなってぼろぼろになる感覚。

そんな終わり方を知ってしまった。

だからこそ盲目的に「交際」そのものを崇めようとは思わなくなる。

でも、だからこそ「彼氏欲しいな」なんて気軽に口にできる人が、

今は少しだけ、うらやましい。

恋は楽しくきらきらしているものではあるけれど、それは一時だけ。

そのあとは、異なる人間が二人、どう相手を愛していけるか、永遠に問われ続ける。

自分一人になることで得られる人生と、幸福感。

そして、相手と一緒に居続けることで得られる人生と、幸福感。

それを、残酷にも天秤にかけさせられる。

こうやって先々を見据えてしまえば、誰かと交際することに前向きな気持ちなんて持てない。

なんて悲観的なのだろう。

……でも結局しばらくすればまた、誰かと一緒にいることを望むであろう自分の姿も、

容易に想像できてしまうのだから心底呆れてしまう。

 

「だって、自分の好きな人の側にいられるって、やっぱり素敵なことじゃん。」

「将来なんて考えずに、今だけを見て楽しめるって、幸せだよ。」

 

だから、もしまた誰かを好きになっても、こんな風に

「その時、今が幸せで、楽しいならそれでいい」と

自分を許してあげようと思う。

先なんて、見据えずに。

 

要するに、

誰かと一緒にいることを、嫌おうにも嫌えない、むしろ好きなんじゃないかっていう、

そういうお話を、したかったのだと思う。

 

 

『24歳の散し書き・後』へ続きます。

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